Vol.13 地域の医療ニーズを満たしながら、医療ネットワーク全体を見据えて働く
子どものころから目指していた医師に
ベタかもしれないですけど、小学生のころに『ブラックジャック』に憧れて医者の道に進もうと決めました。大学で離れることもあったのですが、基本的には高校からほとんど旭川が拠点でした。旭川のいくつかの基幹病院で勤務医をしていましたが、ご縁があって名寄市立総合病院に赴任しました。最初は2年程度でまた別の病院へ移るかな…と思っていたのですが、名寄での仕事と生活がとても自分に合っていたようで、気づけばもう6年になります。
私は内科医ですが、最初に名寄に来た時には上司にあたる医師と2人態勢(現在は3人)。かつ旭川の複数ある基幹病院と違って、ここは北海道北部では唯一の基幹病院です。もちろん大変でしたが、人数が少ない分、話が早いところもある。旭川でさまざまな経験をさせてもらってから名寄に来たので、やりたいことや、やり方も見えている中で、自由と責任の両方を持ちながら仕事をすることにやりがいも感じています。
旭川での勤務を経て名寄に来てみて、自分は患者さんを診る臨床が好きなんだなと改めて気づきました。そんな私にとっては非常にやりがいのある職場ですし、都市部で経験を積んだ若手の医師にとっても、キャリアアップの一つとして有益な病院なのではないかなと思っています。
充実した都市機能を備えるコンパクトシティと新しい人間関係
名寄で生活を始めて驚いたのは、徒歩圏内・自転車圏内にいろんなものが揃っていることですよね。勤務先でもある病院、地元百貨店の西條さん、商店街、飲食街、大手量販店、銀行、エンレイホールなどの文化施設、駅…。徒歩10~15分でほとんどのことが事足ります。私の生活圏がほとんど自転車で移動できるので、妻と私とで2台持ってた車を1台にしちゃったんですよ。
病院に関しても、人口27,000人程度のこのまちで、この規模の病院があることは本当にすごいことです。ICU、ドクターヘリ、ドクターカー、救命救急センターもあって、産婦人科や24時間対応の小児科まであり、改めて、道北地域の医療を支えてる病院だと感じますよね。
そんなわけで、職場と日常生活の距離も近く、知り合いや友人も日常で顔を合わせる距離にいるせいか、妻に誘われて地元のイベントのお手伝いをするなど、職場以外での繋がりが増えました。商店街の駐車場で行われる「アスパラまつり」でお弁当を販売したり、約1500人が参加するハロウィンパーティーでキャストの一人として変装したり(笑)。やってみると意外におもしろいです。街や地域の人達とこのような関わり方をしたのは初めてでしたね。
地域医療を充実させ、医療全体を支えていくために
地域医療は、そこの地域を支えるだけでなく、都市部の医療も支えていると思っています。都市部や、医療の中心にある大学病院などのネットワークを維持するには、地方の病院でそこに住む患者さんをしっかり診ていくことが大切です。そうしていかないと、高度な機能や経験のある医師の力が必要な重症者を治療できなくなってしまいます。地域の医療ニーズを満たしながら、医療のネットワークの維持にも寄与していく。私の仕事の一つ一つが目の前の患者さんだけでなく、医療全体を支える礎にもなると思って働いています。それがやりがいの一つでもありますね。
内科医の力をつけるには、自分の専門性も保持した上で、たくさんの患者さんを診ていく必要があります。大学病院などで自分の専門を確立して筋を通した医師が、名寄などで様々な経験を経て肉をつけていくことができたらいいんだろうと思っています。地域医療をより充実させていくためにも、内科医を増やすためにできることはないだろうかと考えてます。
最近は学会などもリモートが増え、情報はもちろん、生活の上でもインターネットで解決できることも多いですよね。仕事でも生活でも、地方にいるデメリットが減ってきていると思います。これからも地域医療を支えながら、名寄の生活を楽しみたいと思います。
プロフィール
石田 健介
1979年北海道富良野市生まれ。2015年に移住。妻と猫の2人と1匹暮らし。
名寄は食材が本当にいいんです。野菜に塩をかけるだけでも、こんなにウマいんだ!と感動します。コストパフォーマンスが最高にいい、レベルの高い飲食店も多いですね。富良野出身ですが、名寄の冬のパウダースノーには驚きます。空も広くてきれいですし、通勤途中に見る自然がうれしいです。