Vol.24 自分のペースで生きる心地良さが、新しいアイデアを生む
故郷を離れ、東京で出会った「ネイル」の仕事
名寄での高校時代、「進学」というのがどうしてもピンとこなかったんです。大学に入ってまでやりたいことや学びたいことというものがなくて、強いて言えば「洋服が好き」くらい。なので、あまり深く考えずに東京で就職活動をしてファストファッションで有名な外資系アパレルブランドに入社しました。人とお話するのが大好きなので接客の仕事は楽しく、とても充実していましたが、仕事を続けていくうちに「もっとじっくり話しを聞いて接客したい」という想いが大きくなってきたんです。ファストファッションの業界では、どうしてもそれが実現できません。そんなときに毎月通っていた、ネイルの仕事に興味を持ちました。1~2時間の施術中にネイリストさんといろんなお話をして、終わったら、心はスッキリして爪はかわいくなる。ネイルサロンってなんて素晴らしいんだろう!と。
会社を退職し、複数のアルバイトを掛け持ちしながらネイルの専門学校へ通いました。通常は2年程度かける学びを1年でやる学校だったのでとてもハードでしたが、卒業後に表参道のサロンでネイリストデビューを果たしました。
東京で、今の私ができることはやりきったかもしれない
1年ほど経ってネイリストとしての知識・経験不足に悩み、いろんな方に相談した結果、「教えることが学びになる」と勧められて、さらに転職をしてネイル専門学校の先生になりました。ちょうどその頃、両親が名寄でキッチンカーを始めたので、お手伝いのためにときどき帰省していたんです。「道北はネイルしている人がとても少ないよ」とか、実家で「この部屋、あいてるよ」なんて冗談のように言われていましたが、名寄の状況もわかってくると少しずつ気持ちが傾いてきました。
ネイルって、おしゃれの中でも最後にたどり着くところじゃないですか。洋服、メイク、髪型、アクセサリー、それを一通りやった後に気になるのがネイルというか。少し敷居が高いのは確かなのですが、ネイルは誰かに見せるためだけでなく、自分のためのおしゃれでもあります。「指がキレイになって、仕事が楽しくなった!」とお客様から言われたりもしますが、まさに自分のモチベーションを高めてくれるんですよね。そんなネイルの良さを、名寄の人にもっと気軽に経験してもらいたいと思い始めました。あと、もう東京でやりたいこと、今の私ができることはやりきったかな、という感覚もありました。
おだやかな名寄だからこそ、アイデアが膨らむ
今年(2024年)の2月に帰ってきて、4月にネイルサロン「Balmy」を自宅の一室でオープンしました。名寄に戻ってきて、心がおだやかになりましたね。東京にいたころは、なんだかいつも焦っていたので。芸能関係の仕事をしている子の、自分をどう見せるか、どう発信するかという話しを聞いて、自分も「なにかしなきゃ!」と思っちゃったり。今は、自分がやりたいことを自分のペースでおだやかにできています。
札幌や旭川でネイリストになるという選択肢もありましたが、情報も価値観も多様すぎる都会では、ネイリスト自身の強い「軸」が必要になります。それよりも私は、お客様とじっくりお話しして、寄り添いながらデザインを提案・施術できるほうが、楽しいし向いていると思ったんです。そういう意味で、名寄のような街のほうが合っていると思います。
散歩しながら名寄の景色をみていると、自然や季節とネイルをマッチさせられたらおもしろそうだなぁ、この森の緑にはどんなネイルが映えるかなぁとかアイデアが膨らみます。名寄は農業に従事している方がたくさんいるので、自然とリンクするようなネイルをする方が増えるといいですよね。爪のケアにもなりますし。とにかくいろんな人にネイルをしてもらって、ネイルサロンで楽しくて豊かな時間を過ごして、「明日から仕事がんばろう!」と感じてもらえたらいいなと思っています。
プロフィール
髙橋 理子
2001年北海道名寄市生まれ。2024年に東京からUターン。父母と3人暮らし。
戻ってきてからは余裕ができて、散歩の時間が増えたのですが、名寄にしかない景色に出会うと心を動かされます。店名のBalmyは「おだやか、爽やか」という意味ですが、スラングで「まともじゃない」という意味も入っています。お客様にとっておだやかなサロンでありたいと思うと同時に、フットワーク軽くチャレンジし続ける私の生き方は、ある種「まともじゃない」かなと思って、店名にしたんです。
Balmy
- Instagram:https://www.instagram.com/riko.balmy?igsh=MXE1YWFsMGVzOXNscA==