Vol.14 天塩川に魅せられてUターン。釣り人たちの集う、道北の情報発信基地になりたい
都会に憧れていた青年が、いつのまにか釣りの世界へ
もともと、アウトドアは嫌いだったんですよ。名寄で生まれ育ち、都会に憧れて、高校卒業後は札幌でいろんな仕事をしながら、遊んでばかりいたなぁ(笑)。
バブルがはじけてキャンプブームの到来がアウトドアに触れたきっかけ。キャンプ場で昼間やることもないから、なんとなく釣りでもするか、みたいな感じで始めたのが25歳の時です。それから通い始めたニセコで名寄の幼なじみと再会して、フライフィッシングを強く勧められたんですよね。フライってなんとなくかっこつけてるイメージがあって、2年くらいその誘いを断ってたんですけど、名寄に帰省した時に「いいから1回振ってみろよ」って言われてやってみたら「わあああ・・・!」ってなって。身体に電気が走ったように、衝撃的におもしろさを感じたんです。
札幌のアパレル会社で働いていたんですけど、30歳の時にニュージーランドにワーキングホリデーで滞在し、「スターウォッチングガイド」をしながら釣りをする、というようなライフスタイルに転換しました。日本に戻ってきても、オフシーズンにコンピューターのメンテナンスや海産物加工場で働いて、オンシーズンはニュージーランドやカナダに釣りに行く、という釣り中心の暮らしをしていました。
灯台もと暗し。海外にも引けをとらないアウトドアフィールド
現在のように、名寄に拠点を移して釣りのガイドを始めたのは40歳からですね。戻ってきた理由は天塩川と名寄川。灯台もと暗しというか、帰ってきて、「いやぁ、こんなにいいところに住んでいたんだなぁ」としみじみ思いましたよ。季節が移ろう中で、川の表情がどんどん変わっていくし、毎日行っても飽きない。最高です。
お客さんの中には年に2回くらいカナダで釣りしている人がいるんですけど、コロナ禍で海外に行けなくなって「カナダと同じ様に釣りが出来る名寄があってよかった・・・毎月でも来たい」なんて言って、実際にもう何回も足を運んでくれています。河原がなくて、川岸ギリギリまで川が流れている、手つかずの大きな川。名寄~智東間の天塩川はもうここはカナダかなって感じだね、本当に。スイングすると気持ちがいいんだ。
ガイドのメインシーズンは5月下旬から11月中旬くらいで、以前は130日くらいガイドしていましたが、「釣りがしたくてサラリーマンを辞めたのに、ガイドをしていると釣りができない・・・」って悩んでね(笑)。現在は最盛期の半分くらいの日数かな。3年くらい前から価格改定もして、原点に戻って自分の釣りの時間も大切にしています。
釣り人がゆったりと情報交換できる場所をつくりたい
3月に事務所を移転して新しい釣り具屋を始めました。これまで同様、質の高いものを販売していきたいと思っています。ひとつひとつ、コミュニケーションをとりながら丁寧に売っていく方が、楽しいんですよね。そして天塩川や名寄川には、それを求めている、理解してくれる人たちが来ています。
海外の釣りのフィールドで有名なまちでは、釣り情報をしっかり伝えてくれるインフォメーションセンターがあるんですけど、自分の店もそんな場所にしていきたいです。この地域で釣りを楽しみたいお客さんたちが、買い物してコーヒーを飲みながら、道北の釣りやアウトドアの情報交換をして、ゆったりと楽しめる場所になったらいいなと。ここには、ここにしかない情報があります。インターネットで検索しても出てこないようなここにいないと得られない情報や、画面で見るだけではわからないような飛び抜けた体験ができる場所なら、人は訪れてきますし、そうすれば飲食・宿泊と地域にお金も落ちていきますからね。将来的には自分がガイドに行くのではなくて、ガイドを派遣したり釣り人たちのサポートをしたりする会社にしたいなと思っています。
自分で楽しみを見つけられる人が幸せになれる
15年前、ガイドの仕事を始めたときには、周りの人には怪しまれたと思いますよ。「魚釣りで生活できるの?」って。日本では、働かないと遊べないっていう風潮があるけれど、遊びを仕事にしてもそれで生活していけるんですよ。ニュージーランドではアウトドアガイドの年収はものスゴく高いですから。日本でもこのようなライフスタイルが広まっていけばいいなと思います。
ニュージーランドでやっていた「スターウォッチングガイド」なんて、空にある星がお金になっちゃうんだから、、、都会の人間が思いつくことだよね。でもそれくらい、田舎の自然って本当に豊かで、希少価値があるものなんですよ。地元にずっといると気づかないんですが。海外から見ても引けを取らないアウトドアフィールドを持つ名寄は、その可能性がたくさんあります。
あと、田舎で生きて行くには、自分で楽しみを見つけられる人の方が幸せを感じられるのかもしれないね。おしゃれなお店も少ないし、大型ショッピングモールもないし、誰かから提供される楽しさが少ないのでね。釣りでもスキーでも、田舎の遊びを好奇心を持って始められる人や、自分で「なんかできそう!」「やってみたい!」って思える人にはとても刺激的で楽しいのがこのまちなんだと思います。
プロフィール
千葉 貴彦
1965年北海道名寄市生まれ。2005年にUターン。フライフィッシングショップ「WILD LIFE」代表。
スキーは名寄にUターンしてから再開しました。冬の釣りガイドを辞めてから、なにかやることないかな、と思って始めたスキーにはまってしまいました。スキー場もいろいろ見て回りましたが、ピヤシリスキー場は、雪質、コース、景観と、本当に最高です。
WILD LIFE
- http://guide.wildlife-t.net/