Vol.12 憧れの「天文」の仕事を求めて。名寄で新しい人生の扉を開く
趣味で勉強を始めた「星」から広がる世界
小学生のころ、父親に連れられて地元の科学館で星を見たのが、興味を持ったきっかけです。それから3年くらい望遠鏡を親にねだってました(笑)。その時には買ってもらえなくて熱も冷め、札幌に進学した後、天文とは関係のない職に就きました。
社会人になり数年が経った時、なんのきっかけか思い出せないんですけど、望遠鏡を買ったんです。調べに調べて15万円くらいのものを。車に積んで、あちこちと星を見に行ったりしていました。最初は知識もなくて、ただただ見るのが好きでした。そのうち、星を撮影したくなって一眼レフのカメラも買い、独学で天文の勉強を始めました。
転機は札幌市青少年科学館で天文指導員のボランティアを始めたことかもしれません。当時、天文指導員は大学生限定で主に理系の学生がやっているものでした。社会人の自分は資格がないと思っていたのですが、ある時その募集サイトを見たら「大学生限定」の要件がなくなっていたんですよ。すぐに連絡したら、今回から社会人も募集を始めたとのことで、その電話で面接の日程も決め、採用となりました。
星を求めてきた名寄で、趣味も増え、生活も楽しく
ボランティアとは言え、望遠鏡を使いながら2時間ほど天文にまつわる話をしなくてはならないので、1か月ほど研修を受けてからデビューしました。2年ほど経験し、天文に関わる職に就きたいと強く思い始めた時に、名寄市に天文台が新しくできて、職員を募集するという情報を得て、すぐさま応募し、現在の職場である「なよろ市立天文台きたすばる」の臨時職員として採用されました。
10年前ですが、初めて来た日のことはよく覚えてます。4月中旬、猛吹雪の日だったんですよ。すごいところに来てしまったなと(笑)。でも暮らしてみると、本当に住みやすくて、他所のほうがいいと思うことはほぼありません。28歳で移住してきたんですが、30歳になるときに何か新しいことを始めてみようと思い立って、登山やサイクリング、スノーボードなどアウトドアを始めました。札幌での会社員時代は職場と家の往復で、趣味も特になく、土日は引きこもりがちだったので、名寄に来たからこそ手に入れられた趣味だと思います。名寄は自然が豊かで、近くにあるので、アウトドアの遊びは始めやすいです。環境や付き合う人が変わると生活も変わっていきますよね。
好きなことを仕事にする喜び
なよろ市立天文台は、とても恵まれているんです。街明かりが少ないのでたくさん星は見える一方で、市街地からのアクセスも良く。車で10分の場所で天の川がはっきりと見えるような天文台は全国的にみてもそう多くはないと思います。夏は小学生や名寄市立大学の天文サークルの学生さんが自転車で遊びに来るくらい。天文台では様々なイベントもやっていますので、たくさんの方に見に来てもらいたいですね。
木原秀雄先生(「きたすばる」の前身である「木原天文台」を1973年に開設した人物)が太陽観測をしていたのですが、私も日課にしています。出勤したらまずやることは太陽観測です。木原先生の生涯観測日数が約4600日、私は10年で1600日ほどなので、追いつきたいですがまだまだですね。いつまで観測することになるのかなぁ。あと、仕事の合間を縫いながら、新しい星も探しています。人生を通じてやりたいことと仕事の区別はないかもしれないです。
好きなことを仕事にするということに対しては、いろんな意見がありますよね。本当に好きなことは仕事にしないほうがいいとか・・・。でも私は、少なくとも「仕事に行きたくないなぁ」という気持ちや週初めがツライ、なんていうことは会社員時代から比べるとめっきり減りました。やはり、働きたかった職場で好きなことを仕事にしているからでしょうね。
これからも好きなことを仕事にしながら名寄での生活を楽しみたいです。
プロフィール
渡辺 文健
1983年北海道釧路市生まれ。2010年に移住。妻と子供と3人暮らし。
自然やアウトドア好きな人には名寄はとてもいい場所です。星はもちろん、冬はサンピラー、夏には雲海など自然の偉大さと美しさを感じられるポイントもあります。リモートワークなどができる職業の方でのんびりと自然の中で暮らしたい方には特におすすめしたいですね。