Vol.18 広い農地で農業がしたい。名寄で見つけた新しいライフスタイル
きっかけは新婚旅行。自分に合う場所が見つかるまで
新婚旅行で、北海道を回ったんです。札幌から稚内へ向けて走って、利尻島、礼文島まで行きました。北海道の田園風景を見て、奥さんも自分も「こんな場所で暮らすのもいいなあ」と感じまして。それが名寄に出会ったきっかけです。
そこで、東京で開催されていた就農フェアに参加し、名寄市で第三者継承(農地や機械、農業の技術などを血のつながりのない第三者に移譲すること)の募集があることを聞きました。
道内の他の地域での募集もあったのですが、自分は大型の機械を使う土地利用型の農業を希望していたことと、いくつかの農家さんをお手伝いして回るのではなく固定の農家さんのところで仕事をしたかったことから、それらの条件を満たす名寄市で農業をすることに決めました。
今は地域おこし協力隊として、農家さんのもとで研修を受けている真っ最中です。
名寄は、住んでみたら快適なまちでした。買い物する場所もコンパクトにたくさんあるし、子どもが遊ぶ場所も多い。利便性って自分ではなかなか変えられないところだと思いますが、もともと生活環境が整っている名寄は、限りなく0に近い不便さですね。
自分は、広くて自然の多い場所が好きで、都会だと気疲れしちゃうタイプ。とはいえ、人口がまち全体で1000人以下くらい……ともなると少し心配で。そういう意味では名寄での暮らしにはストレスがありません。
近所付き合いが仕事も家族もつないでいく
今作っているのはもち米と大豆と、スイートコーン。農家さんの土地を貸していただいて研修中の身ですが、自分が生産者だという気持ちで主体的に動いています。
生まれである静岡でも農業をしていましたが、まだまだ勉強の日々です。静岡と名寄では気候も違いますし、高騰している肥料や燃料費を抑えるための工夫もしなくてはいけません。
農家は個人経営ですから、一戸一戸がそれぞれで頑張ろうという雰囲気はあります。しかしまったく情報共有がされないという訳ではなく、農業振興センターで名寄の地域特性が学べたり、農家さんから野菜の作り方を教えてもらったりもします。
また、同じく地域おこし協力隊だった同世代の先輩に話を聞くこともできます。似たような作付けをしているとオフの時期が被るんです。作業や生育状況で悩んだら気軽に相談できますし、「この品種は良かった」とか「こういう病気が出た」などの情報共有もしています。
近所付き合いは仕事のことだけではなく、子どもとの絡みもありますね。近所の農家さんに、自分の子どもと同じくらいの年のお子さんがいるので、家に遊びに行ったり、晩御飯を食べに行ったりしています。
名寄に来るまで、そういった近所付き合いは好きじゃなかったんですけど、いざコミュニティに入ってみると楽しいものですね。
この土地に、お世話になっている家族に、恩返しを
第三者継承って離農する側としては大変なことだと思うんです。普通離農するときには、土地を売って機械を処分して終わりなんですけど、わざわざ他の人に渡すとなると教える手間がかかるし、面倒ですよね。
それでも自分の研修先の農家さんは、後継者不在の家が多いこの地域のために第三者継承という選択をしてくれました。
指導をしてくださっているご家族のためにも、名寄での農業を一生懸命やっていきたい。そうして地域のみなさんにも認められて、他の離農される方にも「あの人に任せればちゃんと引き継いでくれる」と僕を頼ってくれるといいなと思います。そうして地道に農地を拡大していって、経営を大きくしていきたいですね。
これから地域の行事にもどんどん参加していきたいし、あとは、農業で稼いでジムを作りたいかな(笑)
プロフィール
西川 僚
1993年静岡県生まれ。2022年に名寄市に移住し、現在は地域おこし協力隊として3年間の研修中。
もともとボディビルをしていました。スポーツセンターでトレーニングをしていると、身体を見て「何かやってるんですか」と話しかけてくださる方が(笑) 今では、トレーニングを教えるとお礼にジビエをくれるような関係です。